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I Remember Berklee ⑤

September 1st 1997

今日はいったい何月何日だろうと考えてしまうが、9月1日のようだ。朝から大学の隣のパフォーマンスセンターでオリエンテーションやコースのレジストレーションについての説明があるというのでさっそく行ってみた。始めはエリザベスと一緒に行こうと思っていたが彼女は新入生ではなく「リターニング(復学)スチューデント」扱いになるので、今日は一日部屋で片づけをすると言っていた。「ようこそ!バークリーへ!」ホールの舞台に黒人のものすごく太った女性が出てきたとたん周りの生徒は皆、「ヒューヒュー」と歓声をあげている。大学のスタッフなのだろうが全然堅苦しい雰囲気ではなく、盛んにジョークを飛ばしているらしい。私の前に座っているお父さんとその息子は「もーたまんない~」という感じで、涙を流さんばかりにげらげら笑っている。「何がそんなにおかしいんだろう??」私には何を言っているのかさっぱりわからない。が、適当にわかったふりをして笑いながら聞いていた。自分の知らないうちに大事なイベントを見過ごしてしまったら大変と思い、オリエンテーションの案内の冊子を目を皿のようにして見て、とにかく出られるものは全部出ようと意気込んでいたがこれに関してはそれほど重要ではないようだ。でも大学の雰囲気と英語にも慣れたいので、がまんして終わるまでここにいようと思った。

ここバークリーは音大なので、すべての学生はひとつ専攻楽器を決めなくてはいけない。そして一年はセメスター(学期)制なのだが、新入生はハーモニー(和声学)、アレンジ、イヤートレーニング、ミュージックテクノロジーが必修科目で、どのレベルからスタートするかはテストで決まる。専科は3セメスターまでに決めればよく、演奏中心のパフォーマンス科、コンポジション(作曲)科、アレンジ科、フイルムスコアリング科、ミュージックセラピー科など12もの科から選ぶことになっている。

どうやらコース説明は終わったらしい。2時間も座っていたのでふらふらしながら席を立ち、出口に向かった。次は一人の上級生に対して20人くらいの新入生が各教室に入り、先輩の体験談を聞く集まりがあるらしいのでこれに参加すべく教室に向かった。さっきパフォーマンスセンターの出口で渡された紙には「T5」という教室に行くように、と書いてあった。「あった、ここだ。」しかしドアを開けると前の時間帯のグループがまだ最中であった。皆の視線が私に集ったが、「もう少しで終わるから外で待っていてくれ」という先生の言葉で、私は廊下に立って待った。

5分ほどたっただろうか・・ドアが開き、前のグループがどやどやと出てきた。終わったらしい。「さて、行くか」と思ったとき一人の日本人の女の子に声を掛けられた。「さっき入ってきたとき、日本人かと思ったんだけど・・・」彼女が言うにはまだ知っている日本人は一人もいなくて住むところもこちらにいる友人のところを転々としており、今も引越しの最中で忙しいとのことだった。お互いの電話番号を教えあって別れた。名前は美香というそうだ。

私たちのグループのリーダーは日本人だった。名前は「タク」。昨日会ったタクとはもちろん違う。彼はテキサスクリスチャンユニバーシティを出てここに来たらしい。外国人生徒は英語を話すことに対してつい臆病になってしまうというここと、それをどのようにして乗りj越えていったかなどということを話していた。その後、アイスブレイクをやると言ったが、私はアイスブレイクがなんであるかを知らない。どう見てもロック少年だがピアノ専攻だという男の子と、同じくピアノ専攻の女の子と3人で組み、お互いの出身地や、好きなもの、今不安に思っていることなどを話し合い、それを他の生徒に紹介する、というもので、訳のわからない私にとって非常にハードで2人には迷惑をかけてしまったが、彼らは私の英語力のなさに唖然としながらもフォローしてくれた。が、さすがに終わったあとはぐったりした。「これは参加しないほうが良かったかなぁ・・まいった、まいった」よろよろと教室を出て行く先は再びパフォーマンスセンターである。午後はアンサンブルやラボの授業の説明と日々の生活や勉強に関して問題が生じたときに行く、カウンセリングセンターの活用の仕方などの話があった。

今日はここまで参加すれば一応終了である。部屋に戻るとエリザベスが「今から買い物に行くけど、どうする?」と言う。実は日本で愛用していた米ぬか入りの化粧水を忘れてきてしまったのだ。何か大事なものを忘れていたらどうしようと思っていたがやはり忘れてしまった。アメリカに米ぬか入り化粧水があるかどうかはわからないが、ドラッグストアに行きたい、と言うと、「OK!一緒に行こう」ということになった。夜の町は少し怖いが彼女が一緒なら安心だ。大きな通りを歩いてドラッグストアに着いた。まだ頭がくらんでいる私には寮からの位置関係などはわからない。「化粧水はここね」エリザベスが言う。「ノンアルコールがいいんだけど・・」そういいながら端から見ていった。どれもとっても安いが「安かろう、悪かろう」とう気がして胡散臭い。8ヶ月間私のお肌を守らなければならないものなのだ。さらに慎重にひとつひとつ見ていくとニュートロジーナ社のものがあった。これなら日本でもおなじみのメーカーだ。値段は7ドル弱ととっても安い。「これでいいかな」「そうね、アルコール入りだと刺激が強すぎるかもしれないわね」エリザベスはそう言ってのど飴を手にしてレジに並んだ。今必要なものはとりあえずこれだけだ。私たちはすっかり暗くなった通りを足早に寮へと戻った。

明日はいよいよピアノのプレイスメントテストだ。練習をしたいけれど、まだ練習室はオープンしていないのではないかとエリザベスが言う。仕方がないので昨日受付でもらったオーデションの要項を見直した。初見演奏の課題はポップス、ジャズ、ファンクの3ジャンルあり、音を出して練習していないのでなんとも言えないがそれほど難しそうではない。次にリードシートの曲があり、ポップス、ジャズ、ボサノバの3パターンあった。これはたぶん右手でメロディー、左手でコードを押さえながら演奏できるかどうかをテストするものだと思った。練習ができないのならせめて体調をベストにしておこうと、早々と寝ることにした。やはりベッドは窮屈なのでマットレスを床の上にずりずりと引っ張り出せば少し快適かなと思い、一応エリザベスにお伺いを立てると、「いいわよ」とのお返事だったのでこれから毎晩こうして寝ようと思った。

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