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転落  「NAMEKUJI」ワンダーランド

母と二人の生活が始まった。私と弟が学生だった頃は、私たちが学校に行っている間だけ、パートの仕事をちょこちょことしていたが、ここしばらくは専業主婦だった母も、仕事を見つけ働くことになった。このとき母は50才を過ぎたところであった。母が出勤したあとに私が出かけるのだが、私はかつて家の鍵を閉めて出かける、ということをしたことがなかった。それゆえ、ただ鍵をかけるだけなのにいつも緊張していた。自分は世間知らずだった。といろいろな場面で感じることが多くなり、だが少しずつ「私は世帯主なのだ。自分でやろう」という自覚もでてきた。

それまで自立したいと思ってもなかなかできなかった私だが、図らずも自分で生活することになった。世帯主は私、住所変更に伴い、分籍して自分の戸籍をもった。家賃は36000円、とても安いが築40年ぐらいのぼろ家である。家賃はなぜか引き落としではなく、毎月大家の家まで持参することになっていた。立派な大家の家に行くのは本当に嫌であった。しかしこれを母親にさせるのはかわいそうだと思い、私が毎月納めに行った。光熱費なども私が払い、食費と家事は母が担当という具合で生活の形が決まっていった。家は落ちぶれた私たちにぴったりなものだった。4畳半と6畳間の二部屋に台所、キッチンなどとはいえないものだ。そしてトイレとお風呂、このお風呂にはよくナメクジが大発生した。お風呂に入ろうとすると壁に張り付くナメクジが5、6ぴき、楽しそうにうねうねしているのをはじめてみたときには卒倒しそうになった。それからは入浴前にはまずナメクジの発生状況を確認し、彼らを撤退させてから入浴するようにした。はじめは嫌だったが、慣れてくると、彼らに塩をふりかけて本当に溶けるのか実験してみたりした。それに数年に一度、1月くらいの期間、ねずみに悩まされることがあった。母が留守の時に外から帰って玄関を開けると「ガサッ」と物音がする。夜、寝ようとして電気を消すと「ガサッ」そしてササササササッ!!と何かが走り回る物音。まさかと思って母親に相談すると、「ねずみだよ。この家古いからね・・・」と困ったように言った。母は前々から気付いており、私が気付いたらさぞ大騒ぎするだろうと心配していたらしい。それから母と二人、ねずみ退治が始まった。ある日、ゴキブリホイホイが大きくなったようなべたべた張り付くタイプのものを仕掛け、母と外出先から帰るとまんまと奴がかかっていた。大暴れし、脱糞している。私は気を失いそうになった。キャーキャー言いながら、この惨状を片付けるのが一苦労であった。そして女所帯にこのタイプのものはふさわしくない。ということで、ねずみが食べると、気分が悪くなって家の中でないどこかで死ぬ。というタイプのものに変更した。やがてこれは効き目を発したようである。そのうちねずみは出なくなった。それまではいつ彼らに遭遇するかとおびえる日々が続いた。食器棚を疾走する彼らを見たときは、もう生きていけない位のショックを受けた。母は「嫌なもの見せちゃって、ごめんね。苦労かけるね。」としょんぼりしていた。

しかし最近になって、ねずみに悩んでいる、と話す生徒がいた。ピアノの中に入ってしまって大変なことになったらしい。私はこの過去の体験から、大得意で野中先生おすすめの殺鼠剤を彼女に紹介した。後日、彼女が言うには、私の紹介したものは10年以上の研究期間を経て、さらにパワーアップされたものが開発、販売されており、そのおかげでねずみは出なくなったと喜んでいた。「先生、ありがとうございます!」ピアノのレッスン中にこういう話をするのもどうかと思うが、何事も経験、私にもピアノ以外にまだまだアドバイスできることがあるのだ。と変な自信を持った。


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