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ある ジャズピアニストの出会い

新講師の研修は、日吉で行われた。確か私のような地方からの講師は、研修センターのようなところに2.3泊したと思う。ヤマハ全体の研修センターなので、食堂などに行くと、スポーツ部門、家具部門に勤務する予定の新入社員もいた。食堂で「どっちの方面ですか?」と聞かれ、専攻楽器のことかと思い「ピアノです」と答えると「あ~、音楽の人ね。僕は家具。」と言われ「音楽の人だけじゃあないんだ~」とびっくりした。そこで館林から(足利市からと言っていたかも知れぬ)来たという一人の男性に会った。名は小杉寿男さん。彼が言うには、自分はジャズピアニストで、宇都宮でもライブなどをしているという。女性が圧倒的に多い中、ひげを生やした彼はかなり異色の存在であった。研修はほぼ講義形式だったが、実際レッスンで使うテキストなどの説明をした後、研修担当の先生が言った「それではどなたかに、先生と生徒になっていただいてレッスンをしてみましょう。先生役は、えーと小杉さん。」「困ったな~」彼はしぶしぶ立ち上がるとそれでもなんとか生徒役の先生を相手に、レッスンのシュミレーションをして見せた。私たちはぱちぱちと拍手をしながら(自分たちが当たらなくて、よかった~)と胸をなでおろしたのであった。一日の研修が終わり、夕食を済ますと、私たち地方からの講師はひとつの部屋に集まり、今後のことについていろいろと語り合った。「真面目に講師でもやろうかと思って、試験を受けて、受かったけど、自分は講師に向いているとは思わない」小杉さんはそんな風に言ってような気がする。私は自分からは何を話したか覚えていないが、小杉さんが私に「君もジャズやってみれば?頭悪くなさそうだし・・・。」と言ったのを記憶している。もっともその時(頭悪くなさそうってことは、良くもなさそうってことか・・・)と思い、それほど真剣に受け止めていなかったが、彼のこの言葉は池に投げた石でできる波紋のように私の心に広がった。でもそれは小さな小さな小石であった。

研修が終わり、私たちは稼動する予定の地元に帰った。一度だけ、かつてオリオン通りにあったライブハウス「GROOVY」に小杉さんのライブを聴きに行った。ピアノトリオだった。彼は「小杉銀次」という銀次名・・いや源氏名で出ていた。初めて聴いたJAZZの生演奏だったのかも知れないが、どんな感想を持ったか覚えていない。感動したか・・・、私もああなりたいと思ったか・・・、覚えていない。しかし彼の弾くピアノはまさに彼自身だった。


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